FGO第2部後期主題歌『躍動』についての考察という名の妄想

 

 始めに

  『逆光』の歌詞をじっくり読み解いてみたら人物像が出てきたので、『躍動』でも同じようにやってみようと思って(『逆光』についてはこちら)、頭の中でこねくり回してたのが意外と形になったのでまた書いてみました。

 主題歌が変わってからまだろくに本筋が進んでいないのでほぼほぼ妄想です。まあこういうのは言ったもん勝ちってことで。

 

『躍動』に対して思ったこと

  youtu.be

手に入れるのが勝利なら

手放すのは敗北でしょうか

誰も傷つかない世界

なんて綺麗事かもしれない

それでもまだ賭けてみたい

 

ちょうどこんな月の夜 刻を告げる鐘の音を聞いた

残響は 空っぽの私ぜんぶ見透かしてるようで

 

怒りと嘆きは瞬く間に人から人へと手渡され

いもしない敵を作りあげては 戦えと焚きつけるの

 

走り出すその理由がたとえどんなにくだらなくても

熱く速く響く鼓動

嘘偽りのない躍動だけに耳を澄まして

 

絶対的な正義とか揺るぎない掟を

運命とみんなが呼ぶ偶然の連なりを

いったいどれだけ信じ続ければいいんだろう

もうとっくに裏切られた気もしなくないけど

ああ 天球儀なぞり 指で何度も触れた星座

それは渡り鳥が飛び立つ頃 夜明けの赤い空へ昇る

 

限りなく自由に近い不自由へと向かってる未来

選ぶことを諦めたらもう引き返せない

あの鐘の音に耳を澄まして

 

あらがうほど締め付けられ

求めるほど奪われてしまう

誰もが許しあう世界

なんて綺麗事かもしれない

それでもまだ

 

走り出すその理由がたとえどんなにくだらなくても

熱く速く響く鼓動

嘘偽りのない躍動だけ信じてる

ほら あの鐘の音に耳を澄まして

 いやーいい歌ですよね。

 初めてゲームでOPが流れたときはびっくりしましたけど、ムービーと歌詞でこれまでの2部の旅路を感じさせつつ、がむしゃらに前向きなサビの歌詞と走り出すぐだおたちで未来への希望を感じさせてくれます。

 

 

 

 

 ……ほんとうにそうか?

 

 

 

 

 「いもしない敵を作る」とか「裏切られた」とか「天球儀をなぞる」とか、なーんか所長っぽくないですか?(筆者は『躍動』はオルガマリー所長の歌だと思っているので、ここから先は常にオルガマフィルターを通して聞いている人間の妄想です)

 

 通して聞いた感じだと「より良い世界のために、大変なことがあってもがんばるよ」みたいに解釈しちゃうんですけど、でもそれだとおかしいんですよね。

 

 たとえばサビの「嘘偽りのない躍動だけに耳を澄まして」。

 この表現って変じゃないですか?

 

 仮に「歌声に耳を澄ます」という文があったとして、多くの人が「歌ってる人」と「耳を澄ましてる人」は別だと考えると思います。

 そうやって考えると「躍動する人」と「耳を澄ましてる人」は別人になるわけです。

 そして、「走り出す」のは「躍動する人」のはずです。

 ……「くだらない理由」から受けるイメージが変わりませんか?

 

 「耳すまの人」=「私(オルガマリー)」になるんでしょうが、この「私」の言ってることも読み解くとぜんぜん前向きじゃないです。

 

歌詞考察

 livedoorNEWSの『劇場版FGO キャメロット』特集#2 坂本真綾インタビュー(https://news.livedoor.com/article/detail/19321433/)にて、坂本さんは以下のように答えています。

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 自分は『躍動』はオルガマリーの歌だと確信しているので、オルガマリーの背景に思いを馳せつつ解説していきたいと思います。

 

手に入れるのが勝利なら

手放すのは敗北でしょうか

誰も傷つかない世界

なんて綺麗事かもしれない

それでもまだ賭けてみたい

 手に入れる=勝利

 手放す=敗北

 という関係が示されたあとに傷つく云々と言っているので、敗北≒傷つくということになります。

 つまり「誰も傷つかない世界」というのは「誰も敗北しない世界」=「誰もが勝利する世界」であり、「誰もが手に入れる世界」ということになるわけです。

 この「手に入れる」というのは、オルガマリーの背景を踏まえると承認欲求が満たされることで、これは「誰もが褒められる/認められる世界」と読み替えることもできます。

 

ちょうどこんな月の夜 刻を告げる鐘の音を聞いた

残響は 空っぽの私ぜんぶ見透かしてるようで

 「刻を告げる鐘の音」というのは文字通りの鐘の音ではなく、なにか重大なイベントのことだと思います。

 (ここから追記)というか「ちょうどこんな月の夜 刻を告げる鐘の音を聞いた」ってFate風に言い換えたら「その日、運命に出会った」ってことですよね(主観の好悪はさておき)。(追記ここまで)

 FGOで鐘の音といえばみなさん山の翁とキャストリアを思い浮かべると思います。ただ、ここで思い出してほしいんですが、OPアニメだと「鐘の音」のところでちょうどオルガマリーとキリシュタリアがすれ違ってるんですよね(OPって『逆光』のクリプター紹介カットみたいにふわっとした情報から作られているだろうから正直あまり根拠にしたくないんですけど)(ただ『逆光』と違って大筋が固まってから作ってると思うのであっちよりは信用できるとは思いますが)。

 

  www.youtube.com

 

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 またキリシュタリアは詠唱の最後に「革命の鐘を鳴らせ」とも言っており、この「鐘の音」はキリシュタリアが鳴らした鐘の音……オルガマリーがキリシュタリアと出会ったことだと思います。

 「見透かしてるようで」というのも、オルガマリーの感じたキリシュタリアへの印象としていかにもそれっぽくないですか?

 そうして続きの、

 

怒りと嘆きは瞬く間に人から人へと手渡され

いもしない敵を作りあげては 戦えと焚きつけるの

 につながる。

 「マリスビリーやキリシュタリアたちと比べられることに対する怒りと嘆き」です。

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 (TYPE-MOONエース VOL.13収録 Fate/Grand Order フロムロストベルト「ミス・オルガマリー」)

 

 これちょっとわかりにくいんですが、「敵を作りあげる」のは「人」ではなく「怒りと嘆き」なので、ここはSNSみたいな負の感情の連鎖……みたいなことではなく、

 「(私の感じた)怒りと嘆きは瞬く間に(私の中で)人から人へと手渡され、(私の中で、実際にはいもしない)敵を作りあげては(私の中では)戦えと焚きつける」

 という……、まあ要するに被害妄想ですよね。「お前もお前もお前も、(娘でありながら能力の劣る)自分を見下してるんじゃないか」っていう。

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 (TYPE-MOONエース VOL.13収録 Fate/Grand Order フロムロストベルト「ミス・オルガマリー」)

 

 所長になってからはそういう対象が増えて、加えてマスター適正がないことが判明したのも大きな負荷になってそうですよね。

 オルガマリーは本編でもロストルームでも、強烈な承認欲求を吐露していますが、その背景にはこういうことが影響してるわけですね。

 

走り出すその理由がたとえどんなにくだらなくても

熱く速く響く鼓動

嘘偽りのない躍動だけに耳を澄まして

 冒頭でぶち上げた通り、ここは「躍動する人」と「躍動に耳を澄ます人」に分けて考えるべきだと思います。

 走り出す側は「くだらない理由」に価値を見出していますが、耳を澄ます側はとくに頓着してない、まさしく「くだらない」と思っている。

 でもその結果起きることには「耳を澄ましている」。

 2番サビでは「鐘の音に耳を澄まして」と言っていて、わざわざ同じ表現をつかっています。

 上述したようにオルガマリーにとって「鐘の音」は忌まわしい出来事であり、この「躍動」についても同様に自分にとって良くない結果をもたらすと思っている……ということだと思います。

 

絶対的な正義とか揺るぎない掟を

運命とみんなが呼ぶ偶然の連なりを

いったいどれだけ信じ続ければいいんだろう

もうとっくに裏切られた気もしなくないけど

 ここは最初、「正義とか掟を~」「信じ続ける」とあるので、(Uになった)オルガマリーに残った良心かなと思ってました。

 ただ、1番の歌詞を咀嚼した上であらためて考えてみると、ここらへんもオルガマリーの持つ承認欲求の背景について歌っているのかなと思いました。

 

 「絶対的な正義」は血の繋がり、「揺るぎない掟」はアニムスフィアの使命、「運命とみんなが呼ぶ偶然の連なり」はこれまでの歩み、といったところで、これらはオルガマリーの心の拠り所であり、自分の立場を保証してくれるものです。

 現実はキリシュタリアが実質後継者として扱われることでそれらが瓦解した=「裏切られた」わけですが、それでも拠り所としてすがり続けるしかないということだと思います。

 

ああ 天球儀なぞり 指で何度も触れた星座

それは渡り鳥が飛び立つ頃 夜明けの赤い空へ昇る

 ここ、他の部分が現状想像するしかないのに対して情報がすごく具体的です。

 「渡り鳥」は秋の季語なので、秋の夜明けの空がわかればこれがどの星座なのかがわかるはずです。

 というわけでStella Theater Webというサイトを使って調べてみました。

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 これは9/1の朝5時のロンドンの東の空の様子です。

 見た感じ、黄道十二星座の蟹座・獅子座あたりが怪しいですかね。

 ただ、オルガマリーは誕生日が不明なので、他の誰かの星座なのかなと思います。

 このあとのCメロの「奪われてしまう」や、歌い出しの勝ち負けといい、バチバチに意識していただろうことを考えると、キリシュタリアがそうだったりしないかなーとか。

 

 (以下追記)

 Twitterで「歌詞の星座ってシリウスおおいぬ座)じゃん」というのを見かけて、身体に電撃が走りました。

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 1枚目のほうだと名前が表示されてなかったんで除外しちゃってたんですが、たしかに東の方の空にあります。

 シリウスといえば、本編中に大令呪シリウスライトなるものが登場しているのです。この符号は偶然とは思えません。

 

 シリウスの光なのか灯りなのかはさておき、これはクリプターがマリスビリーから与えられた特別な令呪のことで、これを与えられたからこそクリプターなのだそうです。オルガマリーがそのことを知っていたとしてもなんら不思議はありません。

 オルガマリーがキリシュタリアに立場を奪われたという認識だとすれば、シリウスライトが自分に与えられるはずだったと思っていてもおかしくはないですよね。

 そういう執着が歌詞の「指で何度も触れた」に表れていると思います。

 (追記ここまで)

 

 あと、1番で「」にあったこと、2番で「夜明け」でのことを歌っているので、1番~2番は時系列に沿った出来事なのかもしれません。

 

限りなく自由に近い不自由へと向かってる未来

選ぶことを諦めたらもう引き返せない

あの鐘の音に耳を澄まして

 「限りなく自由に近い不自由」というのは(『躍動』はバックグラウンドを歌ったということなので)2部現在から見てすでに起きた出来事ではなく、「能力不足を自覚している上に被害妄想に取り憑かれている状態では、常に未来への不安が付きまとう」みたいなことじゃないかと思います。

 そして「選ぶことを諦めたらもう引き返せない」というのは、座視していたら取り返しがつかなくなる=不安が現実になることがわかっているから、それを避けるために「鐘の音に耳を澄ます」……即応できるように警戒しておくということかな~と。

 

あらがうほど締め付けられ

求めるほど奪われてしまう

誰もが許しあう世界

なんて綺麗事かもしれない

それでもまだ

 ここも承認欲求についてですね。

 「(承認欲求に)あらがうほど(承認欲求に)締め付けられるし、逆に(承認欲求に従って)求めるほど(誰かに)(キリシュタリアに?)奪われてしまう」

 また、歌い出しがそうだったので、ここも前段と後段で繋がりがあると思われます。ただ、歌い出しが「勝ち負け」と「傷つくこと」で関係がわかりやすかったのに対して、こちらは「承認欲求」と「許すこと」で、繋がりがいまいちわかりにくいんですけど。

 

 許す……許可する……承認する……認める……?

 

 ……そんな言葉遊びある? と思いつつ、「誰もが認めあう世界」というのは求めるものとして妥当だと思うので、まあ多少無理矢理でも…

 

走り出すその理由がたとえどんなにくだらなくても

熱く速く響く鼓動

嘘偽りのない躍動だけ信じてる

ほら あの鐘の音に耳を澄まして

 1番とほぼ同じ歌詞ですが、これは周りのすべてが敵に見えているオルガマリーにとって、信用できるのは出力された結果だけで、そこに伴う動機や過程などは重要ではないということなんでしょう。

 

 『躍動』では『色彩』・『逆光』と違って歌詞の中に「あなた」という言葉が出てきませんが、出てこないだけで「あなた」に相当する人物は存在しています。

 これは、

 ・勝利と敗北の相手

 ・見透かしてくる残響

 ・走り出し躍動する人

 ・蟹座/獅子座の人シリウスを奪った者

 ・求めるほど奪う存在

 と、「誰か」を想定している表現が多数使われているので、間違いないと思います。

 

 で、これが誰のことなのかということなんですが、やはりキリシュタリアではないかと。キリシュタリアはオルガマリーの立場を奪った存在(オルガマリー視点)なので、意識するには十分ですし。

 

終わりに

 ここまでいろいろ書いたんですが、『躍動』がオルガマリーの歌というのは半分はメタ読みからでした。

 後期主題歌というからには今後フィーチャーされるキャラクターをメインに据えているだろう……というのが前提としてあって、

 ・マシュは『色彩』なので除外

 ・『逆光』は藤丸立香(ぐだお/ぐだ子)しかありえないので除外( 

こちらの記事もよろしく)

 ・すべて明かして退場した人物を持ってくるとも思えないのでキリシュタリアも除外

 ・ベリル/デイビットも強敵ではあるだろうけど(そのほか存命のクリプターも)、主題歌にするほどではないだろうから除外

 ・「鐘の音」つながりで今後活躍するだろうキャスター・アルトリアも、ここまで影も形もなかったキャラクターを2部の半分を象徴する歌のテーマに置くのは考えにくいので除外(山の翁は言わずもがな)

 (ここから追記)・セリフからキャストリアは自分の手で鐘を鳴らすことが伺えるけど、躍動では鐘の音は耳を澄ませる(聞こえてくる)もので鳴らすものではないため同一人物ではなさそう

 ・というか第2部”後期”主題歌なのに6章以外でキャストリアに(武蔵ちゃん並の)出番があるかどうか謎で、あからさまに異聞帯のキャラなので出身異聞帯を飛び出して活躍するのか大いに疑問(追記ここまで)

 という消去法の理由と、

 《登場したばかりで謎が多くあり、活躍が約束されていて、暫定ラスボス兼救われるべきヒロインである》オルガマリーなら主題歌として歌われるだけの格もあるだろうと思ったのが大きかったです。

 そんなことをぼんやりと考えつつ歌詞に注目するとオルガマリーを連想させる言葉が見えてきて、そこから今回の考察という名の妄想につながりました。

 ただ、『逆光』のときはインタビューや対談とにらめっこしながら形にしていく段階で(答え合わせをしている気分になったので)確信を持てたんですが、今回はストーリーがほとんど進行していないので根拠にできる情報が少なくて前回ほどの自信は正直ないです。まあないと言っても控えめに言って5割以上はありますけど。

 

 『逆光』と『躍動』の両方とも外してたら木の下に埋めてもらっても構わないです。